千代田ビジネス大賞にノミネートされました
公益法人まちみらい千代田様主催の「千代田ビジネス大賞」に、アトリエ渋谷がノミネートされました。
千代田ビジネス大賞は、「社会・経済への貢献性」、「製品、サービスの革新性」、「企業経営の戦略性」の3項目を基準に、経営革新や経営基盤の強化に取り組んでいる中小企業を表彰する催しです。
アトリエ渋谷は、知的・精神障碍者を積極的に迎え入れ、ともに協力し合って仕事をしてゆくという姿勢が評価されてのノミネートとなりました。
「まちみらいニュース」に掲載していただいた、ノミネートのご挨拶は以下の通りです。
有限会社アトリエ渋谷
○商業デザイン○自由部門
書籍、雑誌のデザイン、制作をしている会社です。
私たちは高齢者、知的・精神障害やひきこもりと呼ばれる人達との障壁のないしごと場づくりを実践しています。経験、個々の持ち味を生かし、社会の本来あるべき姿の中で存続を目指しています。
このノミネートをきっかけに、我が社の試みが、広く知られるとよいなあと思っております。
ゆるフェルメール
寒い日が続きますね。
アトリエ渋谷社内でも、「今年いちばん寒いんじゃないか」という話が出ています。
私は特に足元が寒くて、このデスクがこたつだったらいいのに……と思いながらお仕事に励んでいます。
こんなに寒い日は、心がほの暖かくなるような絵を眺めてひとやすみしてみるのはいかがでしょうか?
という訳で、アトリエ渋谷の画伯、TUNEKICHIさんの新作をご紹介します。
名付けて「ゆる真珠の首飾りの少女」
写実の巨匠フェルメールの代表作が、すっかりTUNEKICHI色に染まっております。
この絵はフェルメールの絵を手元に置いて描いている、つまり模写なのですが、
描きやすいよう線を絞っていくうちに、TUNEKICHIさん独自の、味がある絵に変貌する模様です。
一方で、色使いはけっこう原画に寄せてきている感じで、ターバンの青と黄色(金色の絵の具を使ってらっしゃいます)の表現など、なかなか正確だと思います。
私見ですが、フェルメールの原画の少女は、表情に憂いが満ちていてあまり幸福そうには見えません。
「真珠の耳飾りの少女」の少女を描くにあたって、フェルメールが影響を受けたとされる作品に、グイド・レーニの「ベアトリーチェ・チェンチの肖像」がありますが、
ベアトリーチェ・チェンチは、父親殺しで死刑になった少女です。
この先行作の影響で、フェルメールの少女もまた、悲しげな風情を漂わせている気がします。
一方、TUNEKICHIさんの少女は……憂いとは無縁かと。
少女の表情のゆるゆる感、そしてなぜかピンクの背景(原画の背景は黒です)
見ていると、こちらの心もほころんでしまう様な絵です。
TUNEKICHIさんの作品は、アトリエ渋谷ホームページ内の、
「ユニークアートギャラリー」でもご紹介しています。
ぜひ、ご覧下さい
重版未定
靖国通り沿いの「コミック高岡」さんで、おすすめされていた一冊。
あれ!? 出来じゃなくて未定なの!? と思って手に取ったところ、
「そんなに刷ってどうするの?」「本なんて売れるわけないだろう」と、胸に突き刺さるフレーズが……
おもわずレジに運んでしまいました。
主人公は、社員6人の出版社に勤める編集者。
最初の台詞が「入稿まであと2時間……間に合わない」とある通り、
毎日忙しく働いている(小さな会社なので、客注文の対応や、書店営業もこなす)のですが、
編集した本は、なかなか売れてくれない。
そんな日々の葛藤が、脱力感あふれる絵柄で綴られてゆきます。
特筆すべきはこのコミック、編集者の仕事や専門用語の解説が非常に充実していて、読んでいるうちに自然と編集に関する知識が身に付く作りになっています。
この解説が、現役の編集者である著者の実感に基づいた解説なので、具体的なイメージがつかみやすいのも美点です。
私は、書店員→デザイン会社という経歴で、そのあいだに入る編集者さんのお仕事については、わからないことだらけだったので、非常にためになりました。
そうか、「白焼きで修正」ってそういう意味だったのか……
著者は、“本書を通じてより「編集者」に興味をもってもらえたらとも思います”と書いていらっしゃるのですが、その目的は達しているのではないでしょうか。
オススメの一冊です!
岩波ブックセンターについて
昨日飛び込んで来た残念なニュース、
岩波ブックセンターを運営している「信山社」様が破産、
お店も再開の目処がたっていない模様です。
私みたいなへっぽこ本読みには、「岩波書店の本が沢山」ってだけでヒルんでしまう(岩波さんも、最近はだいぶ柔らかくなって来てますけど)お店でしたが、専門書を確実に手に入れられると言う点で、得難い場であったと思います。
遥か昔すぎて、いささか記憶が曖昧ながら、20代の頃ジョン・ダワーの「敗北を抱きしめて」を購入したのが、岩波ブックセンターだったかと。
見た感じよりは読みやすい本だったのに、大学卒業後のごたごたに紛れてなかなか読み進められず、引っ越しの際に処分してしまったんですよね……
いまは、処分してしまったことを後悔しています。
- 作者: ジョンダワー,John W. Dower,三浦陽一,高杉忠明
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2001/03/21
- メディア: 単行本
- 購入: 4人 クリック: 21回
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- 作者: ジョンダワー,三浦陽一,高杉忠明,田代泰子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2001/05/30
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- 購入: 2人 クリック: 3回
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少し驚いたのは、信山社は岩波書店とは資本関係のない会社だったと言うこと。
岩波書店直営の書店だと思っていた方も、多いのではないでしょうか?
「信山社」という名前の謎も解けました。
実は、法律の専門書を出している「信山社」という出版社がございまして、
その会社と岩波ブックセンターの関係がよく分からなかったのです。
どうやら、たまたま同じ名前なだけだったようですが。
最後に岩波ブックセンターに入ったのは10月頃で、岩波書店の本や同テーマの他社の本をうまく関連づけて、時々柔らかめの本を挟み込んでゆく棚づくりがすごいと思いました。
この時、「敗北を抱きしめて」を再購入するかだいぶ迷ったのですよね。
いま思えば、購入しておけばよかったなあ。
青山ブックセンターや、高田馬場の芳林堂書店など一度無くなりかけても、他社の支援などあって営業を続けられる場合もあります。
岩波ブックセンターも、何らかの形で再建できるとよいですね。
組版ってどんなお仕事?
このところ、実母とパートナーのご両親に立て続けに会う機会があったのですが、
どちらでも聞かれたのは、「アトリエ渋谷はどんなお仕事をしているの?」と言うことです。
「書籍のデザインと、主に組版をやっています」とお返事すると、
次にくるのは、「組版って何?」という質問。
これが、説明するのが難しくて……
しどろもどろになりながら、「文章と写真などを配置して、誌面を作るお仕事なんです」と説明しても、相手はなんだかピンとこない表情です。
前職の書店員だったころは「本屋です」で説明終了だったのですが、「組版」って読者の方と直接接する仕事ではないので、出版業界以外の人にはなかなかイメージしにくいのだと思います。
少しでも分かりやすくイメージして欲しくて、色々考えたのですが、「音楽」に例えるのはどうだろうか?と思いつきました。
著者=歌詞、メロディという素材を作り出すアーティスト
編集者=全体的なイメージなどの調整を行うプロデューサー
組版=プロデューサーの意向を受けながら、アーティストの作った素材を曲の形におとしこむ編曲家(サウンドエディター)
今度組版について聞かれた時は、この例えで説明しようと思います。
席替えと未来と
ちょっとした必要があって、会社の席替えをしました。
アトリエ渋谷メンバーは3つの部屋に別れて仕事しているのですが、
私は今までと違う部屋に移動。
まだ、なれない面もあるのですが、心機一転がんばります。
休日に、西荻窪の信愛書店 en=gawa という書店で、大ベテランの書店員さんと話す機会がありました。
書籍関係のお仕事をしている人間が話し込むと、必ず話題は「紙の本ってどうなっちゃうんだろうね」という方向に流れます。
お話しながら感じたのは、紙の本の役目には「情報を交通整理すること」があるんじゃないかということです。
インターネット上の情報は際限なくあるけれど、膨大すぎて1人で把握することは困難だし、信憑性が薄かったり、あきらかなデマや悪ふざけも多い。
私は、仕事上の必要など正確な情報が欲しい時は、やはり紙の本を参照することが多いです。
いわゆるデジタルネイティブな世代になると、また違ってくるのかもしれませんが……
アトリエ渋谷で請け負っている「組版」というお仕事も、「情報の交通整理」という面があると思います。
正確な情報を読者の方が読みやすい形に落とし込んでゆくこと
やることが沢山あって大変ですけど、そう心がけながらお仕事に励みたいと思います。
本の町
先週の金曜日に始まった「神田古本まつり」が、いよいよ今週の土曜日曜でフィナーレです。
なかなか天候に恵まれず、せっかくの露天がビニールシートで覆われている時間が長かったのは残念ですが、
町にいつもより活気があり、表に出ると本の匂いがしてきそうな雰囲気なのは、さすが世界一の本の町だなあ、と言った感じでした。
私も、何度か露天を冷やかして「ああ、この本読みたいなあ」という本も何冊かあったんですが、今のところ釣果(自分のモノにした古本を、こう呼んでいるのです)はゼロ。
露天から恐る恐る本を抜き出し、さあ、お会計という段になると、もうひとりの私がこう囁くのです。
「この本を買ったら、積ん読本(所有してはいるものの、読んでない本のことです)がまた増えるよね、止めておきなさい」
そう、神保町で働き始めてはや9ヶ月、町にあふれる本達の誘惑に抗しきれず、買ってはみたものの読んでない本が大量に積み上がっているのです。
「読むために本を買っているうちは、まだまだ古本道の初心者」
「読了した本だけでなく、未読の本も、その人の知性を形作っている」
……本好きの先人達は、こんな格言(というか、居直り)を口にしますが、
広いとは言いがたいアパート住まいの身には、そんな贅沢なかなか出来ません。
でも、新刊流通に載っている本はまだしも、古本屋の本との出会いは一期一会、
ここで縁をつないでおかないと、その本を読むことは二度と出来ないかも知れないのです。
買っても積んで置くだけで読んでないじゃん、という突っ込みは無しの方向で……
こう書いているうちにも、「やっぱり、あの本買っておけば良かった」と言う気持ちがむくむくとわいてきちゃいます。
もう一度だけ、あの露天を見に行こうかなあ。
まだ、あの本が残っていたら、それって運命ですよね。